(この記事はらすくろっ!の「くろなかVol.4(16年8月頒布)」に寄稿した記事を加筆修正したものです。)
今回レビューするMEE Audio / Pinnacle P1(以下P1)は、MEE audioという会社が開発・販売しています。僕もいままで知らなかったのですが、MEE audioはアメリカの会社で、MEEは”Music Enjoyment for Everyone”の頭文字から取ったそうです。直訳すると「音楽をみんなで楽しもう!」といった所でしょうか。
MEEは audioはこれまで数千円の低価格帯イヤホンを数種類販売してきましたが、このP1は「2年の歳月をかけてデザイン、設計、リファインメント(洗練)され、かつて無いほどの最高性能を誇るMEE audioのフラグシップモデル」という売り文句をひっさげて登場しました。
P1の筐体は亜鉛合金でできており、メタリックで高級感があります。他のイヤホンと比較すると確かに少し重さを感じられる程度ですが、装着感も非常によく、重さがネックになることもありません。
ドライバはダイナミック型1基ですが、スピーカで採用されているアルミニウムボイスコイルを使用しているそうです。P1は一般のイヤホンよりもインピーダンスが高く、スマートフォン単体では音量は取りづらいとされていますが、手持ちのiPhone6sに直挿ししてみたところ、ボリュームを7~8割くらいまで上げれば問題がない程度に音量が取れました。
付属のイヤーチップは通常タイプ(サイズS/M/L)・トリプルフランジ・ダブルフランジ・コンプライと多種にわたります。いろいろ試して聴いてみましたが、装着感だけでいえばコンプライ。音質は通常イヤーチップが一番だと感じます。
音の特徴としては、中・高域の柔らかさと広がり、のびやかさが一番にあげられます。美音とでもいいましょうか。繊細で透明感があり、綺麗にのびていくといった印象です。弦楽器やハイハット、クラッシュシンバルなどがわかりやすく、一音一音が綺麗に分離され、それぞれにのびて広がっていくという感覚。低域はきつすぎず、かといって不足するでもなく、若干膨らみがあるタイプです。中域寄りではありますが、良いバランスが保たれています。リスニング向きなので解像度で勝負するタイプではありませんが、緩やかな曲や女性ボーカル、オーケストラ等に向くと思います。音場が広く、響きや広がりがあるので、ホール録音されたオーケストラが特に得意な印象です。
ただ、低域を強調するタイプではないので、メタルやラウド、EDMといったノリやキレ、疾走感が欲しい曲はあまり得意ではないかなという印象です。しかしこれはあくまでも付属の「HIGH-GRADE AUDIO CABLE」という純正ケーブルをもちいた際の印象です。このケーブル、材質に銀メッキ純度99.99%の銅をもちいているそうですが、中に抵抗が入っており、この銅ケーブルと抵抗があの美しさとのびやかさを演出しているようです。ケーブル端子はMMCXで、リケーブルが可能となっています。
このケーブルをリケーブルすることによって、P1は汎用型イヤホンに変化します。まず特徴的だった中域の包まれるような優しさが少し影を潜め、かわりに勢いが増し、エッジが立つように感じられます。低域はキレとスピード感が出るようになり、ロックやラウドがノリノリで聴けるようになります。僕も最初リケーブルして試聴した際、「ケーブルだけでここまで変わるのか」と驚きました。個人的にはリケーブルをしたあとのP1の方が好みの出音をしていました。
まとめますと、女性ボーカルものや、オーケストラなどの響きを重視するならば純正ケーブル。ロック系やEDM、ラウド、スクリームなど低音のキレと疾走感がある曲を聴く際にはリケーブルといったところでしょうか。MMCX端子のリケーブルは自作も含めて入手難度はそれほど高くないと思いますので、是非ともあわせて試聴していただきたいと思います。
同じイヤホンでありながら全く違ったキャラクタを演出してくれる二刀流イヤホン Pinnacle P1。価格も当初の25,000円程度から実売で18,000円程度まで下がっていますので、低価格帯のイヤホンからのランクアップにおすすめです。