Audeze / LCD-1を購入しました。

投稿者: | 2020年6月1日

ひさしぶりにオーディオの話です。

はじめに

Audeze(オーデジー)はアメリカのヘッドホン/イヤホン製造販売会社で、平面駆動式の大型ドライバを搭載した高級ヘッドホンを数多く出しており、ハイエンド帯のラインナップは非常に高価なことで有名です。特にフラグシップモデルであるLCD-4はなんと$3995という驚きの価格です。

しかしそんなAudezeも時代の流れに沿ってか、ここ数年はEL-8やSINEをはじめとした小型ドライバを搭載したミッドレンジのヘッドホンを出したり、SINEとiSINEではLightning接続のDAC搭載ケーブルをバンドルさせてみたり、ゲーミングヘッドセットのくせにやたらと出音の評判がよいMebiusを作ってみたりと、アグレッシブに面白い試みをする会社だなという印象です。

ぼくとAudezeと平面駆動式ヘッドホン

出会いは5年前にさかのぼります。クラウドファンディングサイトIndiegogoにて、LH Labs / Geek Out V2+(以下GOV2+)というポータブルアンプを出資した際、”Geek Out V2 Bundle Deal – Secret Perk”というバンドル特典があり、$300のGOV2+を購入すると、Audeze / EL-8が$463+送料$60という破格の値段で購入できるというものでした(EL-8は当時$700ぐらいでした)。このEL-8は同じ品名でも開放型と密閉型の2種があり、悩みに悩んで開放型を購入しましたが、それは数年で手放してしまいました。

それ以降、Audezeからは四半期に一度くらいのペースでセールのメールが届くようになっていましたが、それがきっかけでオンイヤータイプのポータブルヘッドホンSINEを$179+送料$69で購入しました(定価$449)。こちらは完全に無視聴でしたが、幸いにも自分の好みにあう出音をしており、購入して3年経ちましたがいまだに外に持ち出して使用しています。

SINEはぼくが聴いてきた密閉型ポータブルヘッドホンの中では傑出の出音でとても気に入っているのですが、装着感が悪かったり、ポータブルのくせに300g超えで重たかったり、ケーブルが両出し3.5mmTR*2本のくせに本体の差込口が非常に狭くてリケーブルしづらかったり、公式からはPono用の3.5mmTRS*2本のバランスケーブルしか発売されなかったり、後継機のSINE DX(開放型)が出たけれどパッとしなかったり(そりゃポータブルで開放型はね…)で、出音の割には日本ではあまりいい扱いを受けていませんでした。

購入の動機

久しぶりにAudezeからセールのメールが届き見てみたところ、今年2月に$399で発売されたLCD-1が$299+送料$58に割り引きされていたのでさぁ大変。

手持ちの据え置き用ヘッドホンはSennheiser / HD650、beyerdynamic / T1、AKG / Q701と古く型落ちしたものばかりでした。国からの給付金も入ることだし、中古も視野に入れ5万円前後でつよいやつが欲しいなーと考えました。候補はOppo / PM-1の中古品、TAGO STUDIO / T3-01、Audeze / LCD-1の3本に絞ったのですが、SINEでのよい印象と諸々のレビューが決め手となり、LCD-1を購入することにしました。

このLCD-1というヘッドホンはややこしいのですが、2009年に最初に発売されたLCDシリーズの初代機と同名ではありますが、これまでのLCDシリーズとは違い、小型・軽量化したミッドレンジの新型ヘッドホンです。製品の作りとしてはLCDシリーズというよりもSINEシリーズのほうが正しいですね。正直なんでこの名前をつけたのか疑問は残りますが、まぁAudezeにもいろいろ都合があるのでしょう。

Audezeのヘッドホンの印象

ぼくはこれまでにAudezeのミッドレンジヘッドホンを2本購入してきましたが、共通しているのは

良い点

  • 独特の響き(空気感)があり音に厚みがある
  • 中域が非常に豊富
  • 定位はしっかりしていて空間表現は得意
  • 重厚感のある見た目が格好良い(?)

悪い点

  • 音のキレやスピード感はあまりない
  • 能率が悪くアンプか高出力なDAPが必須
  • 装着感が劣悪(本体は重く、イヤーパッドは固く、圧迫感が強い)
  • 端子またはコネクタが独特でリケーブルしづらい(SINE)もしくはできない(EL-8)
  • 視聴時に頭部が揺れ動くと音がおかしくなる(SINE)

どちらともいえない点

  • 低域の量は不足ないが質はほどほど
  • 音場は広くない
  • 音が後ろからも鳴っているような感覚がある(SINE)

といったところです。音に独特の響きがあるのがAudezeの出音の特徴です。これはEL-8とSINEでも同じでしたので意図したものでしょう。音の立ち上がりは単純に遅いのですが、その遅さとヘッドホンの構造が響きを生み、響きが音の厚みにつながっているのではないでしょうか。

Audeze / SINE

Audeze / LCD-1レビュー

では今回のLCD-1はというと、これまでの良かった点はそのままで

  • 高域が綺麗に伸びるようになった(アンプ次第でかなり変わる)
  • 中域が非常に豊富でVo.域に多少艶がでるようになった(同上)
  • 低域の量はそのままに質が改善した
  • SINEと比較して音場が広がり、不自然な音の回り込みがなくなった
  • 装着感が大きく向上した(本体は軽く、イヤーパッドは柔らかくなった)
  • DAPでも問題ないレベルの音量をとれるようになった
  • イヤーパッドがはめ込み式になり脱着が容易になった
  • 接続ケーブルが3.5mmTRS*2本になりアクセスが容易になった

といった感じでした。おそらく今回のLCD-1の発売にあたって、EL-8やSINEの問題点を洗い出して、それをきっちり改善してきたのでしょう。好感がもてます。

ちなみにLCD-1はEL-8やSINEよりは能率があがっています。HiBy / R5のシングルエンド単体で聴いてみたところ音量は十分に確保できましたが、やはりパワーのあるアンプを噛ましたほうが断然いいですね。高域の伸びと中域の質量がより良くなりました。

HiBy / R5 + LH Labs / GO2Pro SE + Audeze / LCD-1

ベタ褒めするだけなのもアレなので、気になった点も書いておきますと

  • 軽量化のためプラスチック製になり強度が心配(見た目は頑張ってる)
  • 折りたたんで付属のキャリングケースに収納できるが音漏れが激しいので持ち運ぶ意味がない
  • ヘッドバンドの長さが短く、調節できる幅があまりない
  • イヤーパッドが小さく、耳に当たるか当たらないかギリギリのサイズ
  • 消耗品であるイヤーパッドが独自規格のため入手性が非常に悪い
  • ケーブルのピンアサインが3.5mmTRSなせいで同社他製品や他社製品を流用できない

サイズに関して個人的には問題なかったのですが、アメリカ産なんだからもうちょっと大きく作ったほうがよかったんじゃないの? とは感じました。人によってはヘッドバンドやイヤーパッドのせいで適切に装着できない人もいるようなので、可能であれば一度試聴されることをおすすめします。

Audeze / LCD-1
ハウジングは一方向に90°回転する
小さく折り畳めるしケースもあるけど、これ開閉型なんですよね…。

楽曲による得手不得手

あくまでも個人的な感想ですが

得意な楽曲

  • ロック、POP、ジャズ、プログレなどの音の数があまり多くないもの
  • 管楽器や弦楽器が使用されるもの
  • スタジオ録音や宅録された音源は特に上手く鳴らしてくれる

苦手な楽曲

  • オーケストラやメタル、ハードコア、打ち込み系などの音の数が多いもの
  • ライブ音源やホール録音された音源

といったところでしょうか。少人数編成のバンドスタイルの楽曲は総じて良い印象です。個人的な好みでいうと「女性Vo.で掛け合いがあるバンド編成もの」が最もポテンシャルを発揮していると感じました。逆にAudeze特有の響きの影響か、ホール録音されたオーケストラはかなり苦手にしており、本来の力を発揮できません。

得意な楽曲であれば録音の質にあまり左右されず上手に鳴らしてくれる印象ですが、逆にいうと高級ヘッドホン的な高い解像度があるというわけではないので、そういったヘッドホンが欲しい方は注意が必要です。

振動板の比較 左:LCD-1 右:SINE

終わりに

これまで聴いてきたヘッドホンはどれも高解像度で「低域のキレと沈み込みがー」とか「クラッシュシンバルの粒立ちがー」というものがぼくの中で評価ベースとしてあったのですが、Audezeのヘッドホンはまるでスピーカーで音楽を聴いているような。少し緩いけれども緩すぎない。派手じゃないけど地味でもない。そのくせそれなりに解像度もあるという、質の高い音楽体験をもたらしてくれました。この感覚がヘッドホンで得られるのは少し不思議な感じです。

逆にAudezeの音作りに合わない人が多くいるのも想像できます。5万円前後の価格帯ではオールジャンルでキッチリカッチリ鳴らしてくれる優等生タイプのヘッドホンも存在していますし、もちろんそれも良いものだとは思いますが、Audeze / LCD-1みたいに特定の音楽に特化したヘッドホンもなかなか良いものだと思いますよ。音作りが好みにあう人にはかなりオススメです。

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